父から土地の持分を相続した。この場合土地は売却できるのか。できない場合の解決策は?
本記事では、土地の持分を相続した時、どのように解決すれば良いのかについて解説しています。
目次
1.持分を相続した土地について、売却できるのか
2.売却できない時の解決方法
3.家族信託について
4.まとめ
1.持分を相続した土地について、売却できるのか
土地を複数の人で所有していることを、法律的には「共有状態」といいます。そしてこの時、各共有者は土地について「持分」という権利を有しています。
イメージとしては、家族で車をシェアする感覚でしょうか。車自体は家族全員のものですが、家族であれば誰もが車を使う権利を有しています。この使う権利のことを指して持分といいます。
土地の共有状態は相続によって引き起こされることが多いですが、一般的にトラブルになりやすいです。例えば次のようなケースです。
・父が亡くなって土地の持分を相続した
・登記は既に済ませている
・子としては土地を売却して現金化したい
・しかし、他の共有者(叔父)は売却に反対している
この時に叔父の意見を無視して、土地を売却することができるのでしょうか。
結論としてはできません。なぜならば、叔父も土地について権利を有しているため、その意向を尊重しなければいけないからです。
ただ、土地全体ではなく、子が相続した持分だけであれば売却可能です。先程の車の例で言えば、車そのものではなく車を使う権利を親戚に売るというようなイメージでしょうか。
持分については子が自由に処分することができるため、他の共有者の意見を聞く必要はないのです。
しかし、持分だけを取得するメリットが少ないため(※1)、土地全体を売却する場合に比べ、買主から大幅な値下げを求められるおそれがあります。そもそも買い手がつかないというケースも多いです。
2.売却できない時の解決方法
持分のみの売却は現実的に難しいため、他の方策を考える必要があります。では、子としてどのような解決方法をとればいいでしょうか。
この問題がこじれている原因は共有状態にあります。そのため、まずは土地を何らかの方法で分割して、単独所有の状態にするという方向性での解決が考えられます。具体的には3つの方法があります。
1つ目は、他の共有者に子の持分を移転することです。
先程紹介した持分売却と異なるのは、売却先が他の共有者であるという点です。今回のケースの場合、この方法を取ることで、土地は叔父の単独所有になります。叔父としては土地を第三者に売らずに守ることができ、子としても現金化ができます。双方の意に沿う形であるため、協議も上手くまとまる可能性が高いでしょう。
ただ、この方法は叔父が持分を買うだけの資金を持っていることが前提です。また、資金を持っていたとしても、売却金額について双方の意見がまとまらなければ解決はできません。
2つ目は、土地を分筆することです。
分筆とは、登記簿上1つの土地を複数の土地に分けることをいいます。土地に線を引いて、物理的に分けるイメージですね。持分に応じて分筆をすれば、子が持っている土地と叔父が持っている土地が別の土地扱いとなるため、売却も問題なく進めることができます。
しかし、どう土地を分けるかで話し合いがまとまらない可能性があります。例えば、同じ面積の土地でも日当たりが良いかどうかで評価は変わります。様々な条件を踏まえて、お互い納得がいく分筆方法を探す必要があるでしょう。
3つ目は、共有物分割請求訴訟を提起することです。
話し合いで解決できない場合は、裁判所に判断を委ねることができます。裁判所は様々な事情を鑑みて、次の3つの分割方法から1つを選びます。
現物分割……持分に応じて土地を分筆すること
代金分割……土地を競売してその代金を分けること
価額賠償……共有者の一人が他の共有者の持分を買い取ること
この訴訟を提起すれば、いずかの方法で必ず分割がなされます。ただし、どの方法を取るかは裁判所の判断次第になるため、意に沿わない形で解決が図られる可能性があります。ですので、話がまとまらない場合の最終手段として考えるべきでしょう。
3.家族信託
今回のケースでは利用が難しいですが、家族信託という解決方法もあります。
家族信託を簡単に説明すると、財産の所有者と管理者、受益者を分ける契約です。例えば祖父の預貯金を父が運用し、運用益を子の教育資金に充てるというような利用方法があります。
これを共有不動産に当てはめると、共有している収益不動産(マンションやアパート)を共有者の一人が管理し、得られる賃料を持分に従って分配するという解決策が取れます。所有権を動かさずに、利益を分配できるので柔軟な解決が図れるという訳です。
ただ、制度自体が複雑なため、利用の際は法律の専門家の力を借りた方がよいでしょう。
4.まとめ
土地の持分を相続した際に、処分方法について共有者間の意見がまとまらないケースは多いです。今回は、そのような場合の解決方法をご紹介しました。
ただ、どの方法にもメリットとデメリットがあります。どの方法がご自身のケースに合うか検討された上で行動されると良いでしょう。もし判断がつかない場合は、法律の専門家にご相談されることをお勧めします。
※1 所有者と違って、共有者は土地の利用方法について制限が課せられています。例えば共有者単独では、土地の処分や建物の建設ができません。そのため、持分だけを取得するメリットは一般的に少ないです。